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FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)

症状

FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)では、股関節を深く曲げたりひねったりしたときに股関節の付け根(鼠径部)に痛みが生じます。例えばスクワット動作で深く腰を落とした時や、急な方向転換・ターン動作の際に痛みが走ることが多いです。初期には運動の後に違和感を覚える程度ですが、進行すると運動中はもちろん日常生活で椅子から立ち上がる動作や階段昇降でも股関節痛が出現することがあります。

特徴的なのはインピンジメント症状といわれる「引っかかり感」です。股関節を動かした際に関節の中で何かが衝突するような感じや、詰まるような違和感を覚えることがあります。痛みは鼠径部(股の前寄り)に感じることが多いですが、お尻や太ももの外側に放散する場合もあります。運動後には股関節周囲の重だるさや可動域の低下を自覚することもあります。

FAIの症状は当初軽度でも、放置すると徐々に悪化し、重症化すると長期間痛みが引かずスポーツどころか普通に歩くだけでも辛くなってしまうことがあるため注意が必要です。

原因

FAIの根本原因は股関節の構造的な問題にあります。正常な股関節は大腿骨の骨頭(丸い球状の骨)と寛骨臼(骨盤側の受け皿)が適合してスムーズに動きますが、FAI患者ではこの形状に異常があります。典型的には、カム型(大腿骨頭の形がいびつで出っ張っている)やピンサー型(寛骨臼が深すぎたり変形していて骨頭を覆い過ぎている)と呼ばれる骨の変形があり、股関節を動かした際に骨同士が衝突(インピンジ)してしまうのです。その結果、関節唇や軟骨が繰り返し挟み込まれて損傷し、炎症と痛みを引き起こします。特に先天的に骨形成不全(発育不全)がある女性は症状が出やすいとされます。

例えば生まれつき寛骨臼の被りが浅い股関節形成不全では、関節が不安定なぶん周囲の筋肉に負担がかかりやすく、インピンジメントを助長します。一方、骨の形に問題がない場合でも、コンディショニング不足が原因となることがあります。過度な練習による疲労の蓄積や、誤ったフォームでの動作を続けることで、股関節周囲の筋肉や腱が硬くなり柔軟性が低下します。筋力低下も相まって股関節の動きがスムーズでなくなり、正常な可動域内でも組織同士が衝突しやすくなります。

こうした筋力・柔軟性のアンバランスもFAI発症の一因です。以上のように、骨の形態異常と筋機能の低下が絡み合ってインピンジメントを引き起こし、放置すると軟骨損傷や関節唇損傷を伴って症状が悪化していきます。

診断

FAIが疑われる場合、まず詳しい問診で疼痛の状況や誘因動作を確認します。「どの動きで痛むか」「運動量や練習内容」「以前から股関節の硬さを指摘されたことがあるか」等を伺い、FAIのリスクファクターを洗い出します。

続いて診察ではインピンジメントテスト(股関節屈曲内旋テスト)を行います。患者様を仰向けに寝かせ、股関節を深く曲げて内側にひねると痛みが誘発されるか確認します。FAIではこのテストで鼠径部痛が再現されることが多く、陽性所見となります。また股関節の可動域を計測し、正常に比べて屈曲や内旋が制限されていないかも調べます。左右差が大きい場合や明らかな制限がある場合、関節内衝突の存在を示唆します。

画像検査としてはまずレントゲン撮影を行います。骨盤正面像や斜位像で大腿骨頭と寛骨臼の形態を評価し、カム変形(大腿骨頚部の隆起)やピンサー変形(寛骨臼の過被覆)の有無をチェックします。レントゲン所見でFAIを裏付ける異常があれば診断は確定的です。

また関節唇損傷の評価にはMRI検査が有用ですが、当院では痛みの原因がFAIによる機能的な衝突と判断された場合、まず保存療法を優先します。MRIが必要と考えられるケース(例えば手術を検討する段階など)では適切なタイミングで専門施設にご紹介いたします。診断結果を総合し、患者様一人ひとりの症状に応じた治療プランをご提案します。

治療

FAIの治療では、まずは保存的(非手術)療法から開始します。股関節の痛みが強い場合は、痛みの出る動作や激しい運動を一定期間中止し関節を休めます。特に深い屈曲やひねり動作は痛みを誘発するため避け、日常生活でも和式座りを避ける・低い椅子から立ち上がる動作をゆっくり行う等の工夫をします。痛みの緩和のために消炎鎮痛剤の内服や湿布を使用することもあります。

リハビリテーションはFAI治療の柱です。当院では理学療法士の指導のもと、股関節周囲の柔軟性向上と筋力強化トレーニングを行います。具体的には、硬くなりがちな股関節周囲の筋(腸腰筋や大殿筋、股関節内転筋群など)のストレッチを入念に実施し、関節の遊びを取り戻します。あわせて体幹や骨盤周囲の安定性を高める筋力トレーニング(腹筋・殿筋群など)により、股関節への負担を軽減するようアプローチします。股関節の動きを妨げている要因(筋の硬さ・弱さ)を一つ一つ改善することで、インピンジメントの起こりにくい状態へと導きます。

また、スポーツをされている方には動作フォームの見直し指導も行います。例えば股関節の柔軟性が不足している選手にはウォーミングアップでのストレッチ方法を指導し、フォームの癖で余計な負担がかかっている場合には専門的な視点からアドバイスします。

痛みが強いケースでは股関節内へのステロイド注射やヒアルロン酸注射を行い、炎症と痛みを和らげることもあります(エコーガイド下で安全に実施します)。こうした保存療法を数ヶ月続け、多くの症例で症状の改善が得られます。実際、軽度~中等度のFAIであれば適切なリハビリにより競技復帰できるケースが少なくありません。

しかし、骨の形態異常が著しく痛みが取れない場合や、関節唇損傷が進行してロッキング症状(関節が引っかかる感じ)が強い場合などでは、手術が検討されます。手術は関節鏡視下にて衝突の原因となっている骨突出部を削り取る骨形成術や、損傷した関節唇の縫合・切除などを行います。手術により物理的な衝突を除去することで痛みの根治が期待できますが、術後のリハビリも重要で、完全なスポーツ復帰まで数ヶ月を要します。

当院では手術適応と判断される場合、股関節鏡の専門医をご紹介し連携して治療に当たります。まずは保存療法で改善を目指し、それでも困難な場合に最小限の侵襲で済む手術を選択する方針です。いずれにせよ、FAIによる股関節痛を軽視せず、早期に適切な対応をすることで将来的な変形性股関節症への進行を防ぐことができます。股関節の引っかかり感や痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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