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シンスプリント:脛骨過労性骨膜炎

症状

シンスプリントは、正式には脛骨過労性骨膜炎と呼ばれ、ランニングやジャンプを繰り返すスポーツで頻繁に発症する下腿のスポーツ障害です。特に、下腿(すね)の内側、具体的には膝から足首にかけての下から3分の1の範囲に鈍く、広範囲な痛みを伴うことが特徴です。この痛みは、運動時に最も顕著に現れ、患部を押すと強い痛み(圧痛)を感じることが多いです。

この疾患の症状は、その進行度合いによって4つの段階に分類されます。初期の段階(ステージ1)では、運動後のみに痛みを感じますが、運動を続けると痛みが一時的に和らぐことがあります。しかし、この段階で治療を受けずに運動を続けると、次第に症状が進行します。ステージ2では運動の前後にも痛みを感じるようになり、ステージ3になると運動中も常に痛みが持続し、スポーツパフォーマンスに支障をきたします。さらに重症化し、ステージ4に進行すると、安静時にも痛みが続き、歩行が困難になることもあります。

  • ステージ1: 運動時にのみ痛みがある
  • ステージ2: 運動前後に痛みがあるが、スポーツ活動に支障はない
  • ステージ3: 運動前中後に痛みがあり、スポーツ活動に支障をきたす
  • ステージ4: 安静時にも痛みが強く、スポーツ活動は不可能

原因

シンスプリントの直接的な原因は、ランニングやジャンプといった反復的な動作による下腿への過剰な負担、いわゆる「使いすぎ(オーバーユース)」です。陸上競技、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど、ダッシュやジャンプを頻繁に行うスポーツで発症リスクが高まります。また、部活動の新入生や、急に運動を再開した成人など、短期間で急激に運動量が増えた場合に発生しやすいことから、「初心者病」と呼ばれることもあります。

この過剰な負担は、単一の要因だけでなく、複数の要素が複合的に絡み合って生じることがほとんどです。これらの要因は、主に身体的な問題である「内的な要因」と、環境や用具に関わる「外的な要因」に分けられます。

内的な要因 (身体的・技術的な問題)

  • 下肢の形態異常: 扁平足や回内足(足首が内側に傾く)など、足のアーチ構造が不十分な場合、着地時の衝撃を十分に吸収できず、すね周りの筋肉や骨膜に過剰な牽引力がかかり、炎症を引き起こしやすくなります。
  • 筋力・柔軟性の不足: ふくらはぎや足裏の筋肉の柔軟性が低下していると、運動時に骨膜を引っ張る力が強くなり、微細な損傷が生じやすくなります。また、衝撃を吸収・分散する役割を担う股関節や体幹の筋力が不足している場合も、下腿への負担が増大します。
  • 不適切な運動フォーム: すねに過度な負担をかけるような走り方や着地方法も原因の一つです。

外的な要因 (環境的・用具的な問題)

  • 練習環境: 硬いアスファルトやコンクリートといった地面は、着地時の衝撃を十分に吸収できないため、下肢への負担を増大させます。
  • 不適切なシューズ: クッション性の低い靴や、使い古して靴底がすり減った靴は、足への衝撃を十分に緩和する機能が低下しているため、シンスプリントの発症要因となります。

シンスプリントは、痛むすねの部位だけでなく、身体全体の生体力学的なバランスの崩れが原因となっていることが少なくありません。この痛みは、身体が発する警告サインであり、その背後にある複数の要因を包括的に捉えることが、根本的な解決と再発予防の鍵となります。

診断

シンスプリントの診断は、まず患者様の症状を詳しくお伺いする「問診」から始まります。次に、すねの骨の内側を指で押して痛みの有無や範囲を確認する「身体診察」を行います。

シンスプリントの痛みは、すねの骨に生じる「疲労骨折」の初期症状と酷似しているため、両者を正確に見分けることが非常に重要です。シンスプリントは、ある程度広範囲に鈍い痛みが生じるのに対し、疲労骨折は一点に集中する鋭い痛みを伴うという違いがあります。疲労骨折の可能性を除外する目的で、レントゲン検査を行うこともあります。

項目シンスプリント疲労骨折
痛む場所広範囲(数cm〜10cm)一点に集中(数cm以下)
痛みの性質鈍痛鋭い痛み

この鑑別と病態の正確な把握に際し、当院ではエコー(超音波)検査を積極的に活用しています。エコー検査の最大の利点は、骨の表面を覆う骨膜の炎症や、筋肉の付着部の状態をリアルタイムで確認できる「動的評価」が可能な点にあります。静止した画像では捉えられない、運動に伴って組織がどのように動いているか、どこに過度な負担がかかっているかといった、痛みの発生する瞬間を直接目で見て確認できます。この動的評価は、痛みの根本原因を正確に特定する上で、極めて有用な情報をもたらします。

治療

シンスプリントの治療は、主に保存療法が中心となります。痛みの程度や原因に応じて、複数のアプローチを組み合わせ、痛みの軽減と根本原因の改善を目指します。

  • 安静と活動制限: 痛みが強い場合は、原因となった運動を一時的に休止することが最も重要です。患部に継続的な負担をかけないようにすることで、炎症の鎮静を図ります。
  • 薬物療法: 痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤の内服や湿布を用いることで、患部の炎症を抑えることができます。
  • リハビリテーション: 痛みの根本原因を改善し、再発を予防するためには、リハビリテーションが不可欠な柱となります。硬くなったふくらはぎや足裏の筋肉の柔軟性を高めるストレッチ、衝撃吸収能力を高めるための筋力強化などを行います。
  • 装具療法: 扁平足や回内足などの形態異常が原因となっている場合は、足のアーチをサポートするオーダーメイドのインソールを作成し、すねへの負担を軽減します。
  • 体外衝撃波治療: 長期間痛みが引かない難治性のシンスプリントに対しては、体外から圧力波を患部に当てることで、痛みを感じる神経を変性させ、即時的な痛みの軽減を目指す治療法です。

これらの治療は、単に痛みを一時的に和らげるだけでなく、根本原因を改善し、二度と痛みを繰り返さないための身体づくりを目的としています。

シンスプリントは再発しやすい疾患であるため、治療後の予防が非常に重要となります。日頃から練習量や強度を急激に増やすことは避け、身体に合ったシューズを選びましょう。また、運動前後のウォーミングアップやクールダウン、ふくらはぎや足裏のストレッチ、足の筋力強化を継続的に行うことが、再発を防ぐ鍵となります。痛みの異変を感じたら、まずは無理をせず、医療機関に相談して適切な診断と治療を受けることが、早期の改善と再発予防につながります。

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