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diseaseアキレス腱炎
症状
アキレス腱炎は、アキレス腱自体やその周囲に痛みや腫れを引き起こす疾患です。痛みはかかとの後ろや、ふくらはぎの下部に集中して現れることが多く、運動中や歩き始めに特に強く感じられる傾向があります。起床後の最初の一歩が痛むのも、アキレス腱炎に特徴的な症状の一つです。また、つま先立ちやジャンプなどのアキレス腱に負荷がかかる動作で痛みが誘発されることもよくあります。
炎症が進行すると、アキレス腱自体が腫れたり、熱感を帯びたりすることがあります。患部を指で押すと強い痛み(圧痛)を感じるのも一般的な兆候です。軽症や初期の段階では、痛みがあってもほとんど腫れがない場合や、ごくわずかな腫れに留まることもあります。
アキレス腱炎の病態は、痛みの部位によって細分化されることがあります。アキレス腱炎は腱そのものの炎症を指すのに対し、アキレス腱の周囲を覆う「パラテノン」という膜が炎症を起こす状態は「アキレス腱周囲炎」と呼ばれます。アキレス腱周囲炎は、アキレス腱の広範囲に腫れや熱感が現れることがあり、アキレス腱炎よりも治癒に時間がかかると言われています。
原因
アキレス腱炎の最も主要な原因は、アキレス腱への「オーバーユース(使いすぎ)」です。特に、ランニング、ジャンプ、ダッシュ、急停止といった動作を繰り返すスポーツは、アキレス腱に繰り返しストレスを蓄積させ、炎症を引き起こす可能性を高めます。バスケットボール、バレーボール、サッカー、陸上競技などがこれに該当します。また、急に運動量を増やしたり、不適切なフォームでトレーニングを続けたりすることも、アキレス腱に過度な負担をかける原因となります。スポーツ活動だけでなく、肉体労働などによる繰り返しの作業も発症の引き金となることがあります。
アキレス腱にかかる負荷は、個人の体の構造や外部環境によっても大きく左右されます。例えば、ふくらはぎの筋肉や足首の柔軟性が低下すると、アキレス腱が伸びにくくなり、その分負担が増加して炎症のリスクが高まります。また、足のアーチが崩れて扁平足になると、着地時の衝撃を吸収する機能が低下し、アキレス腱へのストレスが増大します。
着用する靴も重要な要因です。クッション性の低い靴、サイズが合わない靴、かかとが硬い靴などは、アキレス腱に直接的な負担をかけます。特に、ハイヒールなどの靴を長時間使用することでアキレス腱が収縮した状態になり、急にかかとの低い靴に切り替えると、腱が急激に伸長されることで炎症を引き起こす可能性があります。アスファルトなどの硬い路面での運動も、衝撃が十分に吸収されず、アキレス腱への負担を増大させる一因となります。加齢によりアキレス腱から柔軟性が失われることも、発症原因の一つです。
診断
アキレス腱炎が疑われる場合、整形外科を受診することが推奨されます。医師はまず、患者様の運動習慣や痛みの経緯について詳しく問診を行います。その後、アキレス腱の触診を行い、痛みのある部位や腫れ、圧痛の有無を確認することで、病態を推測します。レントゲン撮影を行い、踵(かかと)周辺に骨性の原因がないかを確認することも有効です。
アキレス腱炎の診断において、超音波画像診断装置(エコー検査)は非常に有用なツールです。この検査は、身体の表面にプローブという機器を当てるだけで、アキレス腱の内部構造や周囲の組織をリアルタイムで観察することができます。炎症により肥厚した腱の厚みを正確に確認できるだけでなく、腱を動かしながらその可動性や動きの滑らかさを評価する「動的評価」も可能です。これにより、静的な画像だけでは把握しにくいアキレス腱の病態を詳細に把握することができます。
治療
アキレス腱炎の治療は、手術を必要としない「保存療法」が基本となります。最も重要な治療の第一歩は、痛みを誘発する運動を中止し、アキレス腱への負荷を軽減することです。痛みが強い場合は、患部を氷で冷やしたり、消炎鎮痛剤の内服や湿布を用いることで、炎症を抑えます。また、かかとへの衝撃を吸収するために、インソールやヒールパッドなどの装具を使用することも有効です。
炎症が治まった後は、アキレス腱やふくらはぎの柔軟性を高めるストレッチが再発防止に不可欠です。アキレス腱炎に特に有効とされる「エキセントリックストレッチング」は、階段などの段差を利用し、かかとをゆっくりと下ろす動作を繰り返すことで、痛みの原因となる異常な血管を減少させる効果が報告されています。
保存療法を行っても症状が改善しない「難治性アキレス腱炎」に対しては、体外衝撃波治療が有効な選択肢となります。この治療法は、患部に衝撃波を照射することで、痛みの原因となっている神経を破壊し、同時に組織の修復・再生を促すものです。メスを使わない非侵襲的な治療法であるため、麻酔が不要で、皮膚に傷をつけることもありません。治療後すぐに歩行や日常生活に戻ることが可能です。