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野球肘

症状

野球肘は、投球動作によって引き起こされる肘関節のさまざまな障害の総称であり、単一の疾患ではありません。これらの障害は、特に骨が未成熟な成長期の子どもや若年層に多く見られます。症状は損傷部位や進行度によって異なり、軽微な違和感から日常生活に支障をきたすほどの重篤な痛みまで多岐にわたります。  

野球肘は、発生部位によって主に肘の内側(小指側)に生じる内側型野球肘(UCL損傷など)と、外側(親指側)に生じる外側型野球肘(離断性骨軟骨炎)に分けられます。

内側型野球肘(UCL損傷など)

  • 投球時や投球直後に肘の内側に痛みを感じる。  
  • 初期は痛みが投球後しばらくすると引くことが多いが、進行するにつれて痛みの時間が長くなり、全力での投球が困難になる。  
  • 肘の内側の骨の出っ張った部分を押すと痛み(圧痛)を感じる。  
  • 重症化すると、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫され、薬指や小指にしびれや感覚の鈍さが現れる。  

外側型野球肘(離断性骨軟骨炎)

  • 初期は痛みが少ないか、ほとんどなく、投球後の肘のだるさや違和感として現れることがある。  
  • 重要なサインとして、肘関節の可動域制限(特に肘がまっすぐに伸びなくなること)がみられる。  
  • 症状が進行すると、関節に剥がれた軟骨や骨の欠片が挟まり、「ロッキング」と呼ばれる、肘が特定の角度で動かせなくなる状態を引き起こす。  

これらの症状を放置すると、将来的に野球ができなくなるだけでなく、日常生活にも支障をきたす原因となり得るため、早期の対応が非常に重要です。  

原因

野球肘の最も直接的な原因は、投球動作の繰り返しによる肘への過剰な負荷、すなわち「オーバーユース」です。しかし、単なる投げすぎだけでなく、複数の要因が複合的に絡み合って発症するケースがほとんどです。  

投球動作では、肘の内側には関節を引き離そうとする強い牽引力が、外側には骨と骨がぶつかり合う強い圧迫力が繰り返し加わります。これらの力によって、損傷部位や病態が異なります。  

内側型野球肘の原因

  • 投球動作の「コッキング後期」から「加速期」にかけて、肘の内側には上腕骨と前腕骨を引き離そうとする力が加わります。  
  • この牽引力が繰り返しかかることで、成長期の子どもでは骨の成長を司る成長軟骨板(骨端線)が損傷し、大人の場合は内側側副靭帯(UCL)などの組織が損傷します。  

外側型野球肘(離断性骨軟骨炎)の原因

  • 投球動作の同じ瞬間に、肘の外側には骨と骨がぶつかり合う圧迫力が生じます。  
  • この繰り返される衝突によって、上腕骨小頭の関節軟骨やその下の骨が傷つき、最終的に剥がれ落ちる離断性骨軟骨炎へと進行します。  

さらに、肘への負担を増大させる重要な要因として、「投球フォームの問題」が挙げられます。下半身から体幹、肩、そして肘へと力を伝える「運動連鎖(キネティックチェーン)」のどこかに不具合があると、その負担が肘に集中してしまいます。股関節や肩甲骨の可動域が狭い、体幹の筋力不足といった問題は、不適切な投球フォームにつながり、野球肘のリスクを大幅に高めます。  

このように、野球肘は「投げすぎ」という単一の原因で発生するわけではなく、身体の柔軟性や筋力の低下、そしてこれらが引き起こす投球フォームの乱れが、複雑に絡み合って発症する疾患です。  

診断

野球肘の効果的な治療を開始するためには、まず正確な診断が不可欠です。診断は、患者様の自覚症状や投球時の動作を詳細にお伺いする問診と、医師が肘の状態を直接確認する身体診察、そして画像検査を組み合わせて行います。  

問診と身体診察

  • どのような動作で痛みが誘発されるか、いつから痛みがあるかなどを詳しくお伺いします。  
  • 患部を押して痛みがあるか(圧痛)を確認したり、特定の動き(肘を伸ばす、反らせるなど)を加えて痛みが誘発されるかをチェックするテストを行います。  

画像検査

  • レントゲン検査:骨の剥離や成長軟骨板の損傷、骨の変形などを客観的に評価します。  
  • 超音波(エコー)検査:当院では、放射線被ばくがない超音波検査を重視しています。レントゲンでは映らない軟骨や靭帯、筋肉といった軟部組織の状態を詳細に観察できるため、X線写真では異常が認められない初期の離断性骨軟骨炎の発見にも有用です。また、関節を動かしながらリアルタイムで内部の状態を観察できるため、投球動作でどのような問題が生じているかを視覚的に捉えることができます。  

早期に異常を発見し、適切な治療を開始することで、重症化を防ぎ、選手生命を守ることが可能になります。  

治療

野球肘の治療は、原則として「保存療法」が中心となります。保存療法とは、手術以外の方法で治癒を目指す治療法であり、単に痛みを抑えるだけでなく、根本原因を改善して再発を予防することを目的とします。  

保存療法

治療の第一歩は、原因となった投球動作を一定期間中止する**「安静と投球制限」です。症状の程度や損傷部位によって期間は異なり、軽症であれば2〜4週間、骨や軟骨に損傷がある場合は数ヶ月に及ぶこともあります。このノースロー期間は、焦らずに患部をしっかりと休ませることが治癒への近道となります。痛みが落ち着いてきたら、次に  

「リハビリテーション」を開始します。リハビリは肘だけでなく、股関節、肩甲骨、体幹の柔軟性や筋力を高めるストレッチやトレーニングを通じて、投球動作時の肘への負担を軽減させる包括的なプログラムです。  

PRP療法(多血小板血漿)

保存療法に抵抗性を示す場合や、より早期の競技復帰を目指す選手には、先進的な治療法であるPRP療法をご提案する場合があります。この治療法は、患者様ご自身の血液を採取・濃縮し、患部に注入する再生医療です。血小板に含まれる「成長因子」が損傷した組織の修復を促進し、自然治癒力を高める効果が期待できます。

特に内側側副靭帯(UCL)の損傷に対して有効性が示唆されており、非治療群と比較して高い改善率が報告されています。ご自身の血液を使用するため副作用のリスクは低いというメリットがありますが、保険適用外の治療であり、効果には個人差があることをご理解いただく必要があります。  

手術

保存療法で改善が見られない場合や、骨片が遊離してロッキングを起こしているような重症例では、手術が必要となる場合もあります。しかし、こうしたケースは稀であり、ほとんどの野球肘は早期に適切な診断と保存療法を開始することで、手術を回避し、安全に競技へ復帰することが可能です。

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