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距骨下関節不安定症

症状

距骨下関節不安定症は、足首の奥、かかとを構成する踵骨(しょうこつ)と、その上にある距骨(きょこつ)が接する部分に不安定さが生じる病態です。この不安定感は、歩行時や運動時に足首のぐらつきや、今にも捻挫しそうな不安感を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

この疾患は、一度の強い外傷が原因となることもありますが、多くの場合、軽度の捻挫を何度も繰り返すことで、徐々に不安定性が進行していくのが特徴です。平らでない地面を歩くときや、階段を降りるときに、足首がぐらつくような感覚が最も特徴的な症状です。

距骨下関節の不安定性によって生じる具体的な症状は多岐にわたります。

  • 足首の痛みは、一般的にイメージされる足首の前面や側面ではなく、かかとの奥の方に感じる鈍い、あるいは鋭い痛みとして現れることが多いです。
  • 一度不安定性が生じると、足の裏が内側を向く「内反捻挫」を何度も繰り返してしまう傾向が見られます。
  • 歩いているだけでも違和感やぐらつきを感じたり、スポーツや運動後に痛みや腫れが生じたりすることもあります。
  • 中には、痛みが夜間や朝方に続くといった、より慢性的な症状に悩まされるケースも見られます。

これらの症状が単なる一時的なものではないのには、距骨下関節で生じる構造的な変化が関係しています。初回の捻挫、特に内反捻挫では、距骨と踵骨をつなぐ靭帯に損傷が生じます。この靭帯が損傷し、機能が低下することで、関節の安定性がわずかに損なわれ、無意識のうちに再度の捻挫が起こりやすい状態になります。この軽微な不安定性による反復的な微小な外傷が、継続的なストレスを関節包や靭帯にかけ、痛みを慢性化させる悪循環を生み出すのです。距骨下関節不安定症を放置すると、軟骨に継続的なストレスがかかって徐々にすり減り、最終的には重度の関節炎へと進行するリスクが高まります。単なる捻挫の後遺症として捉えるのではなく、早期に適切な診断と治療を行うことが、将来的な関節の損傷を防ぐ上で非常に重要となります。

原因

距骨下関節不安定症は、単一の原因で発症することは少なく、過去の外傷、足部の構造的な特徴、そして日々の活動による負荷が複雑に絡み合って生じる病態です。多くの場合、足首の捻挫を繰り返すことによって引き起こされますが、その他の要因も大きく関与しているため、その全体像を理解することが重要です。

主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

過去の外傷

  • 反復性捻挫: 最も一般的な原因は、足首の捻挫を何度も繰り返すことです。特に、足の裏が内側を向く「内反捻挫」によって、距骨と踵骨をつなぐ靭帯や足根洞内の靭帯が損傷し、不安定性が生じます。一度の捻挫を軽視し、十分な治療やリハビリテーションを行わないと、損傷した靭帯が完全に治癒せず、不安定な状態が慢性化するリスクが高まります。
  • 踵骨骨折: 高所からの落下や飛び降りなどによるかかとの骨(踵骨)の骨折が、距骨下関節の適合性を悪化させ、不安定性を引き起こすことがあります。骨折が関節面にまで及ぶと、骨同士の摩擦や軟骨の損傷が生じやすくなります。

機能的・構造的な要因

  • 靭帯機能の低下: 捻挫や過剰な動作により、靭帯が緩んだり、機能が低下したりすることで、関節の安定性を保てなくなります。
  • 足部周囲の筋力不足: 足首を支える腓骨筋や後脛骨筋などの周囲の筋肉が弱っていると、足関節の不安定感が増し、ぐらつきやすくなります。これらの筋肉は、不安定な地面でのバランスを保つ上で重要な役割を果たしています。
  • 足部の形状変化: 踵が外側に倒れる「回内足」や、内側に倒れる「回外足」といった足部の形状不良や、扁平足などの縦アーチの変形も、距骨下関節に不均衡な負荷をかけ、不安定症の原因となることがあります。

生活習慣やスポーツによる負担

  • オーバーユース: ランニングやジャンプ、急なストップ&スタートを繰り返すスポーツ(サッカー、バスケットボール、テニスなど)は、足首に過度な負担をかけ、不安定症のリスクを高めます。
  • 不適切な靴: ヒールの高い靴や、足に合わない靴を履き続けることも、距骨下関節への負担を増加させる要因となり得ます。

このように、距骨下関節不安定症は、靭帯損傷という外傷的要因と、それに伴う筋力低下や足部の生体力学的バランスの崩れという機能的要因が密接に結びついて発症する、複雑な病態です。単に痛い部分を治療するだけではなく、これらの複合的な原因を正確に特定し、対処することが、適切な治療方針を立てる上で非常に重要となります。

診断

距骨下関節不安定症の診断は、患者様からの詳細な問診と、医師による丁寧な身体診察から始まります。この疾患の診断は、単一の検査だけで確定することは難しく、複数の方法を組み合わせて総合的に判断することが不可欠です。

まず、医師がいつから、どのような動作で痛みやぐらつきが生じるか、過去に捻挫の経験があるかなど、症状の経過や状況を詳しくお伺いします。また、スポーツ歴や職業、普段履いている靴なども、原因を探る上で重要な情報となります。これらの情報から、距骨下関節不安定症の可能性を判断します。

次に、身体診察を行います。医師が患者様の足関節の可動域を確認し、特定の徒手検査(手で関節を動かすテスト)によって、不安定性の有無や痛みが誘発される位置を特定します。距骨下関節の不安定性がある場合、歩行時や片足立ちの際に、足の動きに特徴的なぐらつきが見られるため、これらの動作を観察することも診断の一環となります。

当院では、レントゲン撮影に加え、足関節の靭帯や軟部組織の状態をリアルタイムで観察できるエコー検査を重視しています。距骨下関節不安定症の主たる症状は、静止状態では分かりにくい「動的な」不安定感です。エコー検査では、関節を動かしながら靭帯の動きや状態をその場で確認できるため、靭帯の連続性の欠損や肥厚などを非侵襲的に評価する上で非常に有用です。これは、患者様の自覚症状と、画像上の所見を直接結びつけることが可能になり、診断に対する納得感と信頼感を高めることにつながります。これらの診察と検査を組み合わせることで、症状が距骨下関節不安定症によるものか、あるいは他の疾患によるものかを正確に診断し、患者様一人ひとりに最適な治療計画を立案します。

治療

距骨下関節不安定症の治療は、まず痛みの軽減と関節の安定性回復を目的とした保存療法が中心となります。患者様の症状や不安定性の程度に応じて、複数のアプローチを組み合わせ、根本的な原因の改善を目指します。

保存療法

  • 安静と固定: 痛みが強い場合はまず、患部への荷重を避け、サポーターやテーピングなどを用いて関節を安定させ、安静を保ちます。
  • 薬物療法: 非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の内服や湿布を用いることで、患部の炎症を抑えます。必要に応じて、関節内の炎症を直接抑える目的で、局所麻酔薬やステロイド剤の注射を行うこともあります。
  • 装具療法: 足部の不安定なアライメントを矯正するために、足底板(インソール)や外側ウェッジ付き足底板を装着する装具療法も有効です。
  • リハビリテーション: 痛みや炎症が落ち着いた段階では、リハビリを開始します。足首の関節可動域訓練や、不安定性を補うための腓骨筋群や後脛骨筋の筋力強化、そして足裏のバランス感覚を養うトレーニングを行います。これらは、再発を防ぐ上で非常に重要です。

再生医療(PRP療法)という選択肢

当院では、保存療法で十分な効果が見られない方や、手術を避けたいと考える方に対し、PRP療法を治療の選択肢として提供しています。これは、患者様ご自身の血液から成長因子を豊富に含む多血小板血漿(PRP)を抽出し、患部に注入する再生医療です。

この治療法は、損傷した靭帯などの組織修復を促し、炎症を抑制することで、痛みの軽減や機能改善が期待できます。患者様ご自身の血液を使用するため、アレルギー反応のリスクが低いという利点もあります。PRP療法は、従来の保存療法と手術療法の間の選択肢として、痛みを和らげ、関節の機能を改善させる効果が期待できる新しい治療法です。

保存療法やPRP療法を含めた治療を継続しても症状が改善せず、日常生活に大きな支障をきたす場合には、最終的な選択肢として手術が考慮されることがあります。具体的な術式には、緩んだ靭帯を再建する手術や、関節のぐらつきを制限する制動術などがあります。

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