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disease二分靭帯損傷
症状
二分靭帯損傷は、足関節の捻挫の中でも、時に見過ごされがちな疾患です。一般的な足首の捻挫では外くるぶし周辺の痛みが中心となりますが、二分靭帯損傷の場合、足首よりも少し前、特に足の甲の外側に痛みが集中することが大きな特徴です。この靭帯は足の甲にある重要な安定化組織であり、損傷すると独特の症状を引き起こします。もし足首の捻挫を経験した後に、以下のような症状が続く場合は、この靭帯の損傷が隠れている可能性があります。
- 足首の捻挫から数週間経過しても、足の甲(特に外側)の痛みや腫れが改善しない。これは、一般的な捻挫の痛みとは異なる、長引く痛みが特徴です。
- 外くるぶしの少し前方、足の甲の外側に強い圧痛がある。この痛みは、外くるぶしと小指側の付け根を結んだ線の、指2本分ほど前方の部分に特に顕著に現れます。
- 歩行時や体重をかけた際に、足の甲の外側に鋭い痛みが走り、足をかばうように歩いてしまう。
- 受傷直後は、痛みで立ち上がったり、体重をかけたりすることが困難になることがある。
- 時間の経過とともに、外くるぶし周辺から足の甲、さらにはかかとにかけて広範囲に皮下出血(内出血)が広がる場合がある。これは、損傷の程度が比較的重度であることを示唆しています。
これらの症状を「ただの捻挫」として軽視し、適切な治療を怠ると、靭帯が不安定なまま治癒してしまい、慢性的な痛みが残る原因となります。また、足の機能が十分に回復せず、歩行やスポーツ活動に支障をきたす可能性もあるため、違和感や痛みが長引く場合は、専門医による正確な診断と適切な対応を受けることが非常に重要です。
原因
二分靭帯損傷は、他の足首の靭帯損傷と併発して発生することが多く、単独で損傷することはまれです。主に、足首を内側にひねってしまう「内反捻挫(内返し)」が主な原因となります。特に、足首が「底屈位(つま先が下向き)」の状態で内側に強くひねられた場合に発生しやすいのが特徴です。このような靭帯への過度な負荷は、特定の状況下で生じます。
- 内反捻挫(内返し): 最も一般的な原因であり、不安定な地面での走行や、段差を踏み外した際に足首が内側に強くひねられることで発生します。ヒールの高い靴を履いている時や、下り坂で足を滑らせた際にも生じやすい受傷機転です。
- 特定のスポーツ動作: バレーボール、バスケットボール、サッカーなど、ジャンプや急な方向転換を繰り返すスポーツでは、着地時に足首に大きな負荷がかかることが原因となります。
- 解剖学的・機能的要因: 偏平足など足部のアーチが低い方や、足首周囲の筋力不足がある場合、靭帯に繰り返し過剰な負担がかかりやすくなり、損傷につながるリスクが高まります。
このように、二分靭帯損傷は一度の強い外力だけでなく、日常生活における繰り返しの負荷や、個人の体の構造的な問題が複合的に絡み合って発症することが多く、その正確な原因を特定することが回復への第一歩となります。
診断
二分靭帯損傷の診断は、一般的な足関節捻挫との鑑別、そして合併症の有無を正確に判断するために非常に重要です。特に、この損傷は靭帯が付着している骨の一部を一緒に剥がしてしまう「剥離骨折」を伴うケースが多いため、見逃さないための慎重な評価が求められます。当院では、患者様の症状を詳しくお伺いし、身体診察と画像検査を組み合わせて、損傷の程度を総合的に評価します。
- 問診と身体診察: まず、いつ、どのような状況で怪我をしたか、痛みの性質や強さなどを詳しくお伺いします。次に、医師が患部を直接触診し、靭帯の正確な位置や周囲の筋肉の硬結(こり)を確認します。さらに、足の動きを調べることで、不安定性の有無を評価します。
- 画像検査:
- レントゲン検査: 靭帯が骨から剥がれる「剥離骨折(踵骨前方突起骨折)」を伴うケースが多いため、骨折の有無をまず確認します。このタイプの骨折は、単なる捻挫と見過ごされやすいため、注意深く観察することが不可欠です。
- 超音波(エコー)検査: 患部にゼリーを塗り、プローブを当てることで、リアルタイムで靭帯の状態や炎症、腫れを可視化できます。靭帯の断裂の有無や、炎症による靭帯の肥厚、また関節の不安定性を詳細に確認する上で非常に有効な検査です。動かしながら内部の状態を確認できるため、治療の進行状況を把握し、スポーツ復帰の判断基準にも用いられます。
このように、当院では複数の検査を組み合わせることで、単なる捻挫では片付けられない二分靭帯損傷を正確に診断し、患者様一人ひとりの症状に最適な治療計画を立てて、合併症や後遺症のリスクを最小限に抑えます。
治療
二分靭帯損傷の治療は、損傷の程度(グレード)に応じて段階的に進めていきます。多くの場合は手術を必要とせず、保存療法が中心となります。当院では、痛みの軽減と靭帯の修復を促す急性期の処置から、再発を防ぐためのリハビリテーションまで、一貫した治療プログラムを提供しています。
保存療法
- 急性期治療(RICE処置): 受傷直後は、安静(Rest)、冷却(Ice)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)からなるRICE処置を迅速に行い、炎症と腫れを抑えます。特に冷却は、炎症を軽減させるために1回あたり15分から20分を目安に行います。
- 固定療法: 損傷の程度に応じて、サポーターやテーピングによる保護から、より強固なギプスやシーネを用いた固定を数週間行うことで、靭帯が正しく修復されるのを助けます。
二分靭帯損傷の重症度別治療の目安
| 損傷の程度(グレード) | 症状の特徴 | 治療と期間の目安 |
| グレード1 (軽度損傷) | 靭帯の微細な損傷。運動時のみ軽度の痛みがあり、腫れや内出血はほとんどない。 | テーピングやサポーターによる保護。数日〜1週間程度でスポーツ復帰が可能。 |
| グレード2 (中等度損傷) | 靭帯の部分断裂。強い圧痛、腫れ、皮膚の変色を伴う。歩行は可能だが、強い痛みを伴う。 | 3週間程度のギプスまたはシーネによる固定。その後、段階的なリハビリ。完治まで数週間を要する。 |
| グレード3 (重度損傷) | 靭帯の完全断裂。著しい腫れ、広範な内出血、関節の不安定性がある。自力での歩行が非常に困難。 | ギプスによる強固な固定。骨折を伴う場合は手術を検討。治癒まで3ヶ月以上を要する場合もある。 |
再生医療(PRP療法)
従来の保存療法で痛みがなかなか改善しない場合や、より早期の回復を目指す場合、再生医療として多血小板血漿(PRP)療法を検討することがあります。この治療法は、患者様ご自身の血液から採取した血小板を濃縮し、それを患部に注入するものです。血小板に含まれる成長因子が、損傷した靭帯の修復を促し、炎症を抑える効果が期待できます。特に血流が少なく治りにくい靭帯や腱の損傷に対して、効果を発揮するとされています。
体外衝撃波治療
保存療法では改善しない慢性的な症状や、剥離骨折に伴う骨片の癒合不全を伴う場合などに、体外衝撃波治療が有効な場合があります。体外から患部に音波エネルギーを照射することで、組織の再生を促し、痛みを軽減させる効果が期待できます。慢性的な痛みの原因となっている組織にアプローチし、自己修復能力を活性化させることで、根本的な改善を目指します。
リハビリテーション
固定が外れた後は、足の機能を回復させ、再発を予防するためのリハビリが非常に重要です。初期は、タオルギャザーなどを用いて足首の可動域を広げるストレッチや運動から始めます。次いで、足首を安定させるための筋力トレーニング(特に腓骨筋群)を行い、最終的にはジャンプや方向転換などのスポーツ動作の練習へと進めていきます。不安定板の上でバランスを保つトレーニングは、足首の安定性を高めるのに有効です。