肩の痛み・肩関節治療
shoulderボールを投げるような動作をすると、肩が外れそうで怖い(不安感)
この症状、ありませんか?
ボールを投げるような特定の動作で、肩に不安感や違和感を覚える場合、それは単なる一時的な疲労ではないかもしれません。以下のような症状に心当たりはありませんか?
- ボールを投げる動作で肩が外れそう、抜けそうな感じがする。
- 特定の姿勢で、肩に力が抜けるような感覚がある。
- 肩を動かすと「カクッ」というクリック音や、「ゴリゴリ」という摩擦音、引っかかり感がある。
- 投球後に腕や肩に力が入らない、いわゆる「デッドアーム」のような感覚がある。
- スポーツのパフォーマンスが低下した。
- 夜間寝ているときや、着替え、寝返り、物を取るなどの日常動作でも痛みや不安感がある。
なぜこの症状が?考えられる主な原因
ボールを投げるような動作で感じる肩の不安感は、肩関節の不安定性によって引き起こされます。この不安定性は、主に以下の原因が考えられます。
- 肩関節の動的・静的安定性の破綻: 肩関節は、人体で最も高い可動性を持つ反面、非常に不安定になりやすいという特性を持っています。その安定性は、関節包や靭帯といった物理的な「静的要素」と、腱板(インナーマッスル)などの筋肉による「動的要素」の連携によって保たれています。投球動作を繰り返すことで、これらのバランスが崩れ、上腕骨頭が肩甲骨のくぼみである関節窩の中心から正常な動きの範囲を超えてずれてしまう「動的肩関節不安定性」という状態に陥ります。
- 不適切な投球フォーム: 投球動作は全身の運動連鎖によって行われる複雑な動きですが、フォームが適切でないと、肩だけで投げようとするため肩関節に過剰なストレスがかかります。この局所的なストレスが、肩の不安定性を助長する大きな原因となります。
- 関節唇や腱板の損傷: 肩関節の安定に重要な役割を担う軟骨組織である「関節唇」が、投球の繰り返しや外傷によって損傷することがあります。また、肩関節を動的に安定させる「腱板」が弱くなったり損傷したりすることでも、上腕骨頭を正常な位置に保つ機能が低下し、不安定感を引き起こします。
これらの症状は、ご自身で判断せず、専門医の診察を受けることが大切です。自己判断は、正確な診断を遅らせたり、適切な治療の機会を逃したりする可能性があります。
診断について
当院では、まず患者様の症状を詳しくお伺いします。いつから、どのような動作で、どの程度の痛みや不安定感があるのか、スポーツ歴や外傷歴などを詳細にお尋ねします。この丁寧な問診を通じて、症状の全体像を把握します。
次に、医師や理学療法士が直接肩を動かして、可動域や不安定感を詳細に調べる「徒手検査」を行います。中でも、肩を外転・外旋させて不安定感や痛みを確認する「アプリヘンジョンテスト(不安感テスト)」は、肩の不安定性を評価する上で不可欠な検査です。この検査は、患者様の症状を再現し、どの方向の不安定性が問題となっているかを特定するために非常に有効です。
さらに、エコー(超音波)検査を併用することで、診断の精度を高めています。エコー検査は、診察室でリアルタイムに、そして動かしながら肩関節の状態を確認できるという大きな利点があります。これにより、症状が発生する瞬間の腱や筋肉の動き、上腕骨頭の位置のずれなどを捉えることができます。放射線を使用しないため体への負担がなく、何度でも繰り返し検査でき、痛みのない反対側の肩との比較も容易です。
これらの丁寧な診察や検査を通して、不安定性の根本原因を正確に診断し、患者様に最適な治療法をご提案します。
治療について
診断に基づき、患者様の症状や原因、活動レベルに合わせて、最適な治療法をご提案します。投球動作による肩の不安定性に対する治療は、まず手術をしない「保存療法」が中心となります。
- リハビリテーション: 投球動作による肩の不安定性に対する治療は、投球フォームを見直しながら、肩関節の安定性を高めるリハビリテーションが重要となります。肩のインナーマッスルである腱板や、肩甲骨周囲筋、そして体幹の筋力を強化することで、不安定な上腕骨頭を安定させ、肩への負担を分散させます。
- 投球動作の制限と見直し: 痛みが強い時期は、投球を中止し安静を保つことが必要です。しかし、長期間の絶対安静は、かえって投球フォームを忘れさせ、復帰後の再発リスクを高める可能性があるため、適切なタイミングで投球動作の見直しと改善を行うことが大切です。
- セルフケアと生活指導: 日常生活での姿勢を改善したり、アイシングや温熱療法を行ったり、自宅でできるストレッチや筋力トレーニングを継続したりすることは、回復を早め、再発を防ぐ上で非常に重要です。
当院では、患者様一人ひとりの病状と希望を考慮し、最適な治療法を丁寧にご説明し、ご相談しながら治療を進めてまいります。
症状を和らげるために(医師に相談の上で)
以下の情報は一般的なものであり、自己判断での対処は危険です。必ず医師の診断と指示に従ってください。医師の診断を受けた上で、症状を和らげるための対策として、以下のようなセルフケアが推奨されることがあります。
- 安静とアイシング: 痛みが強い急性期には、無理に動かさず、アイシングで炎症を抑えることが有効です。
- 振り子運動(コッドマン体操): 痛みのない範囲で腕の力を抜き、振り子のように前後・左右にゆっくりと揺らすことで、肩関節の可動域を広げ、筋肉の緊張を和らげます。
- タオルを使った肩甲骨ストレッチ: タオルの両端を持ち、肩甲骨を意識して動かすことで、肩周りの筋肉の柔軟性を高めます。
- インナーマッスルのトレーニング: 痛みが落ち着いてきたら、チューブなどを使ったインナーマッスル(腱板)のトレーニングで肩の安定性を高めることが再発予防に繋がります。
一緒に見られることのある関連症状
ボールを投げる動作での不安感と同時に、以下のような症状が見られることもあります。
- 肩の痛み
- 脱力感や力が抜ける感覚
- クリック音やゴリゴリとした違和感
- パフォーマンスの低下
- 日常生活での支障
これらの症状が複合的に見られる場合は、肩関節内部に複数の問題が潜んでいる可能性も考えられます。
その不安感、放置しないでください
ボールを投げる時の「肩が外れそう」という不安感は、単なる気のせいではありません。それは、肩関節の安定性が損なわれ、このままではより大きな損傷につながる可能性があるという、体からの明確な「メッセージ」です。
この症状を放置すると、日常生活に支障をきたす慢性的な痛みや、スポーツ活動のパフォーマンス低下につながる可能性があります。しかし、早期に適切な診断とリハビリテーションを開始すれば、その不安感や痛みから解放され、快適な生活やスポーツへのスムーズな復帰を目指すことができます。
「たかが肩の不安感」と思わず、まずは一度、専門医にご相談ください。