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diseaseぎっくり腰
症状
ぎっくり腰の最も特徴的な症状は、突然、腰に鋭い激痛が走ることです。この痛みは、時に「ナイフで刺されたような痛み」と表現されるほど激しく、その場から動けなくなることも少なくありません。
症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 急激な痛み: 床に置いた物を拾おうと前かがみになった時、くしゃみをした時、朝ベッドから起き上がろうとした時など、特定の動作の瞬間に腰に鋭い痛みが走ります。
- 動作困難: 痛みが強いため、体を曲げたり、伸ばしたり、立ち上がったり、歩いたりといった日常動作が困難になることがしばしばあります。
- 下肢への違和感: 痛みは腰に集中することが一般的ですが、ごく稀に太ももやふくらはぎにかけて違和感や軽いしびれを伴うこともあります。
一時的に痛みが和らいでも、無理に動くと再び激痛が走ることがあるため、痛みが強い間は安静を心がけることが重要です。また、腰だけでなく下肢にもしびれや脱力感などの異常を感じる場合は、椎間板ヘルニアなど他の疾患が隠れている可能性も考慮し、早期の専門的な診断が不可欠です。
原因
ぎっくり腰は、単一の原因で起こるわけではなく、いくつかの要因が複合的に絡み合って発症します。日々の身体的な負担が積み重なり、その「限界」に達したときに、些細な動作が「最後の一押し」となって引き起こされると考えられています。
その主な原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 筋肉や靭帯の損傷: 重い物を急に持ち上げたり、勢いよく体をひねったりする動作が、腰椎を支える筋肉や靭帯に急激な負荷をかけ、捻挫のような状態や損傷、炎症を引き起こします。特に、寒い朝や長時間同じ姿勢で筋肉が硬くなっているときに、準備運動なしで急に動くことで発生しやすくなります。
- 筋肉疲労の蓄積: 長時間のデスクワークや立ち仕事、重労働など、同じ姿勢を続けることによって腰の筋肉が継続的に緊張し、疲労が蓄積します。これにより筋肉の柔軟性が失われ、些細な負荷でも損傷を起こしやすくなります。
- 椎間板の変性: 加齢や繰り返しの負荷によって、背骨のクッションである椎間板が劣化し、弾力性が失われることがあります。この状態で負荷がかかると、椎間板が変形して周囲の神経を刺激し、痛みを引き起こすことがあります。
- 不良姿勢や体幹筋の弱体化: 猫背や反り腰などの悪い姿勢の習慣は、腰椎に偏った負担をかけます。また、運動不足で腹筋や背筋など体幹の筋肉が弱まると、腰を安定させる力が不足し、不安定な状態となって痛みを招きやすくなります。
診断
ぎっくり腰の診断では、まず患者様の症状を詳しくお伺いし、どのような動作で痛みが誘発されるかを確認します。これにより、痛みの種類や原因の手がかりを探ります。身体診察では、医師が患者様の腰や下肢の状態、筋肉の緊張、可動域などを確認する徒手検査を行い、痛みを誘発する動作を特定します。
画像検査では、レントゲン撮影を行い、骨の形状や、骨棘(こつきょく)の有無などを確認することで、構造的な問題がないかを評価します。また、当院では、診断の精度を高めるためにエコー(超音波)検査を積極的に活用しています。エコー検査は、レントゲンでは映らない筋肉や靭帯、筋膜などの軟部組織の状態を詳細に観察できるという利点があります。
特にぎっくり腰の診断においてエコー検査が極めて有用なのは、患部を実際に動かしながら、リアルタイムで内部の状態を確認できる「動的評価」が可能である点です。静止した画像では分からない、体を動かす過程での筋肉や筋膜の「挟み込み」や「損傷の瞬間」を直接目で見て捉えることができます。この動的な評価は、ぎっくり腰の正確な診断と、その後の効果的な治療計画を立てる上で決定的な情報をもたらします。
治療
ぎっくり腰の治療は、痛みの程度や原因に応じて、複数のアプローチを組み合わせ、痛みの軽減と根本原因の改善、そして再発予防を目指します。
- 安静と保存療法: 痛みが強い発症直後の時期には、まず安静を最優先します。無理に動かさず、炎症の鎮静を図ります。必要に応じて、炎症を抑えるための内服薬や外用薬(湿布)を処方します。症状が非常に強い場合には、注射療法が痛みを和らげるために有効な場合もあります。
- リハビリテーション: 痛みが落ち着いてきたら、再発を防ぐためのリハビリテーションが重要となります。硬くなった筋肉の柔軟性を高めるストレッチや、腰を安定させる体幹の筋力強化などを行います。当院では、理学療法士が患者様の状態に合わせたメニューを作成し、正しい体の使い方を習得できるようサポートします。リハビリの主な目的は、痛みと炎症を軽減し、筋力と柔軟性を回復させ、正しい姿勢を習得することにあります。
- 体外衝撃波治療: 従来の保存療法やリハビリテーションでは改善が難しい、慢性的な痛みが続くぎっくり腰に対しては、体外衝撃波治療が有効な場合があります。これは、患部に体外から圧力波を照射することで、痛みを感じる神経の働きを弱め、さらに組織の修復を促すことで、痛みの根本的な改善を目指す先進的な治療法です。短期間で治療効果が期待できるため、外科的手術に頼らずに済む選択肢として注目されています。
これらの治療は、単に痛みを一時的に和らげるだけでなく、根本的な原因にアプローチし、健やかな腰を維持するための身体づくりを目的としています。痛みが引いた後も、継続的なストレッチや正しい姿勢の意識が再発予防の鍵となります