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disease肉離れ(筋断裂・筋挫傷)
症状
肉離れは、正式には筋挫傷や筋断裂と呼ばれる筋肉の損傷です。筋肉に限界を超える強い負荷がかかることで、筋線維の一部が切れたり、完全に断裂したりする状態を指します。
受傷した瞬間には、「プチッ」「ブチッ」「ビキッ!」といった筋肉が断裂するような音や、鋭い違和感を覚えることが特徴です。受傷後、損傷した部位には強い痛みが生じ、力を入れたり、筋肉を伸ばしたりすると痛みがさらに増強されます。
症状の程度は、損傷の度合いによって異なります。軽度な肉離れでは歩行が可能であるものの痛みを伴うことが一般的ですが、損傷が中等度以上に及ぶと、歩行が困難になるほどの強い痛みを伴い、松葉杖が必要になることもあります。また、患部には腫れや内出血(アザ)が出現し、重症な場合は損傷部位に「へこみ」や「くぼみ」が触知できるようになります。
肉離れは、筋肉痛やこむら返りと異なり、筋組織の物理的な断裂です。筋肉痛やこむら返りは安静にしていれば自然治癒する可能性が高いですが、肉離れは自然治癒が難しく、放置すると症状が悪化し、回復が遅れたり、後遺症を残すリスクが高まります。
| 種類 | 状態 | 症状 | 自然治癒 | 治癒期間 |
| 肉離れ | 筋組織の一部または全体が断裂 | 受傷直後から激しい痛み、腫れ、内出血。歩行が困難になることが多い | 難しい | 1週間~6ヶ月(損傷の程度による) |
| 筋肉痛 | 筋肉の微細な損傷 | 鈍い痛みや違和感。運動翌日に発症しやすい | 可能 | 数日から数週間 |
| こむら返り | 突然の筋肉の激しい収縮 | 足がつったような激しい痛み。力を抜くことができない | 可能 | 数分間 |
原因
肉離れは単なる突発的な事故ではなく、複数の要因が複合的に作用して発生する怪我です。その直接的な引き金となるのは、筋肉がその柔軟性や強度を超えた急激な負荷にさらされることです。急なダッシュやストップ、ジャンプからの着地など、瞬発的な動作で発生します。
この物理的な力だけでなく、その背景には筋肉を「損傷しやすい状態」にする潜在的な要因が隠されています。
- 筋肉疲労の蓄積: 激しい運動が続くと、筋肉が凝り固まり、柔軟性が低下します。疲労した筋肉は急な動きに対応する能力が低下するため、肉離れのリスクが高まります。
- ウォームアップ不足: 十分な準備運動を行わないまま運動を開始すると、筋肉や腱が硬い状態のままであるため、急激な負荷に耐えられず損傷しやすくなります。
- 水分不足: 体内の水分が不足すると、筋肉の柔軟性が低下し、肉離れを起こしやすくなります。
- 筋力バランスの不均衡: 特定の筋肉が過度に発達していたり、左右の筋力に差があったりすると、負荷が不均等にかかり、特定の部位に集中して損傷が発生しやすくなります。
これらの要因が単独、あるいは複合的に絡み合うことで、肉離れを引き起こしやすくなります。
診断
肉離れが疑われる場合、自己判断は極めて危険です。痛みで歩行が難しい、数日経っても痛みが改善しない、動きが制限されているといった症状がある場合は、速やかに整形外科などの医療機関を受診すべきです。軽度の肉離れは筋肉痛と誤解されやすく、放置すると症状が悪化し、筋肉の癒着や硬直、慢性的な痛みといった後遺症を残すリスクが高まります。
当院では、肉離れの診断においてエコー(超音波)検査を重視しています。エコー検査は、患者様の負担が少ない非侵襲的な検査であり、患部を動かしながら筋肉や腱の動きをリアルタイムで確認できる利点があります。これにより、筋線維の乱れや血腫を正確に捉え、損傷の程度と範囲を把握することができます。また、その場で患部の状態を確認できるため、診断から治療開始までの時間を大幅に短縮できます。患者様もご自身の怪我の状態を視覚的に理解できるため、治療への納得感と信頼感が高まります。
肉離れの治療計画は、損傷の程度を正確に把握することから始まります。肉離れは、その重症度によって一般的に以下の3段階に分類されます。
| 重症度 | 損傷の状態 | 代表的な症状 | 歩行能力 |
| 軽度(I型) | 筋線維の微細な損傷 | 軽い痛み、違和感 | 可能だが痛みを伴うことがある |
| 中等度(II型) | 筋線維の部分断裂 | 強い痛み、腫れ、内出血、陥凹 | 困難 |
| 重度(III型) | 筋肉の完全断裂 | 激痛、明瞭な凹み、内出血 | ほぼ不可能 |
治療
肉離れの治療は、単なる安静だけでは不十分であり、受傷直後から段階的に、かつ専門的なアプローチを組み合わせることで、確実な回復と再発防止を目指します。
- 受傷直後の応急処置 肉離れを起こした直後に最も重要なのは、RICE処置と呼ばれる応急処置です。Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)を速やかに行うことで、損傷の拡大を防ぎ、その後の治療効果を高めることができます。
- 段階的な治療とリハビリテーション 医療機関では、重症度に応じた治療が行われます。患部をギプスやサポーター、テーピングなどで固定し安静を保つことが優先されます。また、微弱電流治療器や超音波治療器などの物理療法が活用されます。治療は痛みが落ち着いた後から本格的に始まり、患部周辺のストレッチやマッサージ、筋力トレーニングを段階的に行います。再発を予防するため、最終的には原因となった筋力バランスの不均衡や動作のフォームを改善していきます。
- PRP療法(再生医療):PRP療法(再生医療)は、患者様ご自身の血液だけを使う、身体に優しい再生医療です。ご自身の血液から、組織の修復を促す「成長因子」が凝縮された多血小板血漿(PRP)を抽出し、これを損傷した筋肉の部位に注射で投与します。PRPを注入することで、自然治癒の力を高め、特に従来の治療やリハビリで回復が遅れている中等度(II型)以上の肉離れや、外来治療で改善が難しい難治性のケースに対し、組織の再生を加速させ、早期の復帰を目指すための新たな選択肢となります。アレルギーのリスクが非常に低いのも特徴です。
- 体外衝撃波治療 体外衝撃波治療は、特に慢性的な痛みや、肉離れ後に生じた筋肉のしこりや癒着に対して用いられる治療法です。皮膚の上から患部に衝撃波を照射することで、痛みを軽減し、組織の再生を促します。この治療は、痛みを感じる神経に直接アプローチし、筋肉の硬さや癒着を緩めることで、その場で動作が軽くなる効果が期待できます。従来の治療法で改善が難しい症状に対する選択肢となります。
- 予防と再発防止 肉離れは再発しやすいため、治療を終えた後も予防策を講じることが大切です。日頃からストレッチを習慣化し、筋肉の柔軟性を維持しましょう。運動前には入念なウォームアップを行い、こまめな水分補給も筋肉の柔軟性維持に役立ちます。「少し張っている気がする」「動かすと違和感がある」といったわずかな身体のサインに気づいたら、無理に運動を続けるのではなく、適切な休息を取ることが何よりの予防策となります。