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前足根管症候群

症状

前足根管症候群は、足首の前面にある「前足根管」というトンネル内で、深腓骨神経が圧迫されることによって生じる神経の圧迫障害です。この疾患は、足の甲から足指にかけてのしびれや痛みを主な症状とし、日常生活における特定の動作で症状が悪化する特徴があります。この症状は、しばしば足の裏側に症状が出る足根管症候群と混同されることがありますが、圧迫される神経や症状の現れる部位が全く異なる別の疾患です。

具体的な症状としては、以下のものが挙げられます。

  • 足の甲から親指・人差し指にかけてのしびれや痛み: 足の甲から始まり、親指と人差し指の間にピリピリとしたしびれや痛みが現れます。これは、深腓骨神経の支配領域に一致する典型的な症状です。窮屈な靴(革靴やスニーカーなど)を履いている時に足の甲が圧迫されると、症状が悪化する傾向があります。
  • 特定の状況下での症状の悪化: サッカーやランニングといった、足に繰り返し負担がかかるスポーツ活動時に痛みが強くなることも特徴です。また、夜間に足の不快感が強くなり、睡眠の質が低下する「夜間痛」を伴うこともあります。
  • チネル徴候(Tinel様徴候): 圧迫されている部位(足の甲)を軽く叩くと、足指の先端に電気が走るような放散痛やしびれが生じます。これは、神経の過敏性を診断する上で重要な兆候の一つです。
  • 慢性化・進行した場合の症状: 症状が進行すると、足指を伸ばす筋力が低下したり、足の甲の感覚が鈍くなったりすることがあります。さらに、歩行時のバランスが悪化してつまずきやすくなることも、進行の兆候です。

このように、前足根管症候群は単なる足の不快感ではなく、放置すると筋力の低下や歩行障害につながる可能性のある疾患です。特に、他の疾患と症状が似ていることもあるため、足の甲の違和感が続く場合は、早期の診断と治療が非常に重要となります。

前足根管症候群と足根管症候群の比較

疾患名圧迫される神経主な症状の部位
前足根管症候群深腓骨神経足の甲、親指、人差し指
足根管症候群脛骨神経足の裏、かかと、足の指

原因

前足根管症候群は、足首の前面を走る深腓骨神経が、様々な要因によって物理的に圧迫されることで発生します。原因は、主に外部からの力によって引き起こされる機能的な問題と、もともと体内に存在する解剖学的な構造による構造的な問題に分けられます。これらの要因が単独で、あるいは複合的に絡み合って発症することが一般的です。

具体的な原因は、以下の通りです。

機能的な要因(外的な問題)

  • 靴の締め付け: 最も一般的な原因の一つに、ランニングシューズや革靴など、足の甲を強く締め付けるタイプの靴が挙げられます。長時間にわたる締め付けが、神経に継続的な圧迫を加える原因となります。
  • 過度の負担: ランニングやサッカー、ハイキングなど、足の甲に繰り返しの負担がかかるスポーツや活動も、発症の引き金となることがあります。
  • 体重の増加や浮腫: 下肢のむくみ(浮腫)が原因で、前足根管内の空間が狭くなり、神経が圧迫されることもあります。

構造的な要因(解剖学的な問題):

  • ガングリオンや腫瘤: 神経の近くにできたガングリオン(良性の腫瘤)や、脂肪腫などの腫瘍性病変が、直接的に神経を圧迫して症状を引き起こすことがあります。
  • 骨棘(こつきょく): 骨にできた突起(骨のとげ)が、靴の圧迫と相まって神経を刺激する場合があります。
  • 腱鞘の肥厚: 炎症などにより、神経の周囲にある腱鞘が分厚くなり、神経を圧迫することもあります。

多くの場合、靴の締め付けやスポーツによる負担といった外的要因が、もともと存在するガングリオンなどの内的要因と複合的に絡み合って発症します。そのため、原因を特定することが、効果的な治療への第一歩となります。

診断

前足根管症候群の正確な診断は、症状の根本原因を特定し、適切な治療方針を立てる上で非常に重要です。当院では、患者様のお話を詳しくお伺いする問診から始まり、身体診察、そして先進的な超音波(エコー)検査を組み合わせて総合的に判断します。

診断は、主に以下の方法を組み合わせて行われます。

  • 問診: いつから、どのような時に痛みやしびれがあるか、特定の靴を履いた時やスポーツ時に症状が悪化するかなど、詳細な情報を確認します。この段階で、特に腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症といった、似たような神経症状を引き起こす他の疾患との鑑別を行います。
  • 身体診察: 医師が足の甲を触診し、圧痛や腫れの有無、しびれの範囲を注意深く確認します。診断において特に重要視されるのは、足の甲の神経が圧迫されている部位を軽く叩き、足指に放散痛やしびれが再現される「チネル徴候」の確認です。症状が慢性化している場合は、足指を動かす筋力や感覚の低下も併せて評価します。
  • 超音波(エコー)検査: 当院では、超音波(エコー)を用いて、足の甲にある深腓骨神経や、その周囲の組織の状態をリアルタイムで詳細に観察します。この検査では、神経を圧迫しているガングリオンや腱鞘の肥厚、骨棘などの存在を直接的に確認することができ、症状の根本原因を正確に特定する上で非常に有効です。超音波検査は、関節を動かしながら内部の状態をリアルタイムで確認できるため、静止画では捉えにくい、特定の動きによる神経の圧迫を評価できる利点があります。

これらの検査を総合的に行うことで、症状を引き起こしている真の原因を突き止め、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療計画を策定します。

治療

前足根管症候群の治療は、まず原因となっている神経への圧迫を取り除くための保存療法が中心となります。症状の程度や原因、患者様のライフスタイルに応じて、複数のアプローチを組み合わせ、痛みの軽減と根本的な改善を目指します。安易に手術を選択するのではなく、まずは身体に負担の少ない方法から段階的に治療を進めていくことが重要です。

以下に、当院で提供している主な治療法を挙げます。

保存療法

  • 安静と活動制限: 痛みが強い場合は、原因となった運動や活動を一時的に休止し、患部への負担を軽減することが最も重要です。
  • 靴の調整と装具療法: 窮屈な靴が原因の場合は、靴紐を緩めたり、ゆとりのある靴に交換したりします。また、専用のインソールやパッドを使用することで、足の負担を軽減し、神経への圧迫を和らげることができます。
  • 薬物療法: 痛みや炎症が強い場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)やビタミンB12などの内服薬、または湿布を用いて症状を抑えます。
  • 注射療法: 局所的な炎症を抑え、神経の圧迫を軽減するために、ステロイドの局所注射を行うことがあります。

体外衝撃波治療

慢性的な痛みや炎症を伴う場合、体外衝撃波治療が有効な選択肢となります。この治療法は、音波のエネルギーを患部に集中させることで、神経を圧迫している線維組織や瘢痕組織を解放し、血流を改善します。また、組織の修復と再生を促進し、痛みを軽減する効果が期待できます。これは、保存療法と手術の中間に位置する、より積極的な非侵襲的治療法です。

PRP(多血小板血漿)療法:

慢性的な神経の炎症や組織の変性が原因の場合、患者様自身の血液から抽出したPRP(多血小板血漿)を患部に注射する再生医療が有効です。血小板には、組織の修復と再生を促進する「成長因子」が豊富に含まれており、これにより身体が持つ自然治癒力を高め、損傷した神経や周囲組織の根本的な回復を助けます。

手術療法

ガングリオンや骨棘など、保存療法では取り除けない明らかな構造的原因がある場合、または保存療法を継続しても症状が改善しない場合は、手術によって神経を圧迫している因子を取り除くことも選択肢となります。ただし、長い間神経が圧迫されている症例では、痛みが改善されても、しびれが残ることがあるため、早期の対応が重要です。

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